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「不動産屋にだまされるな」を読んだ感想【著・山田寛英】

不動産屋にだまされるな

就活生には人気が高い一方で、社会一般の評価はあまり高いとは言えないのが不動産業界の実状。

その原因として、顧客として関わったときの業務の不透明さや、依頼内容に対する満足度の低さがあるでしょう。

要するに、「高く買わされた」「安く売らされた」という疑念を払拭できない業務内容で、それを納得するすべがないうちに「法律で決まっている範囲内だから」と報酬を請求され、不満に感じている人が多いということです。

不動産業界では、その業務を取り締まるための厳しい法規制が敷かれていて、監視体制もそれほど甘くありません。

にもかかわらず、多くの顧客が不動産業者とのやりとりに満足していないのでは、安心して不動産という資産を買ったり売ったりできなくなってしまいます。

そうした不動産業界にはびこる「だまし」の実態を知り、「賢い不動産との付き合い方」を考えるためのリテラシーを高める情報が盛り込まれているのが本書です。

「不動産屋にだまされるな」の基本情報

電卓を持つビジネスマン

  • タイトル:不動産屋にだまされるな「家あまり」時代の売買戦略
  • 著者:山田寛英
  • 出版社:中央公論新社(中公新書ラクレ)
  • 価格:800円
  • 発行年月日:2017年1月10日 初版
  • 電卓を持つビジネスマン
  • 評価:星4個(5点満点中)

本書をおすすめしたい人

  • 不動産売買のために情報収集をしたい不動産初心者の方
  • 税務的な視点で不動産売買の仕組みを知りたい方
  • 不動産売買で合法的に節税できるテクニックに興味のある方

「不動産屋にだまされるな」の概要

手に鎖

著者は、監査法人で不動産会社や証券会社の会計監査実務に従事したあと、税理士事務所に移って個人向けの相続対策や申告実務に携わった経歴の人物。

2015年、不動産に特化した会計事務所を立ち上げ、公認会計士の知識と立場を活かした不動産問題の解決を専門に行っています。

本書は5章に分けられ、それぞれの概要は以下のとおりです。

第1章 だから不動産屋はあなたをだます

この章では、著者が主張する不動産取引に関する「だまし」の実態に触れています。

その中でもまず、不動産仲介業者の手を借りなければならない手続きの内容について、業者が有利な市場の仕組みを解説しています。

また、人生最大の買い物である不動産以上に大きいと言える住宅ローンという借金の背景を明らかにして、不動産取引に関して素人がいかに四面楚歌の状態にあるかの根拠を示しています。

第2章 そもそも国は「あなた」より「不動産業界」を保護している

この章では、前章のような不公平が発生しないように監督すべきである国が、不動産業界に有利な情報開示や取引形態を放置していることを指摘。

規制をすり抜けるかたちで業者が利益を増やす方法などの裏事情について言及しています。

第3章 最強!「売買」ガイド

この章では、著者が考える「不動産売買」の基礎的な認識について、順を追って解説。

まずは、不動産を買うときに「売る」という視点が重要であることを指摘しています。

購入する不動産が資産である以上は、帳簿に計上する上で赤字を招かないことがポイントとなる持論を展開。

今後の日本経済の動向は予断を許さないとしながらも、「損をしない不動産」の見分け方のヒントに触れています。

章の後半では、ファイナンシャルプランナーのアドバイス、住宅ローン金利や返済で起こり得るリスク、戸建てかマンションかといった「不動産売買あるある疑問」についての見解を端的に述べています。

最強!「節税ガイド」

この章では、不動産にまつわる税金問題を取り上げています。

条件が合うのであれば絶対に利用して欲しいとする「住宅ローン控除」については、概要だけでなく「賢い使い方」についても触れられています。

また、資金援助を受ける際の贈与税の注意点や、小規模宅地等の特例を使った組み替えによる相続対策にも触れています。

さらに、話題となった「タワマン節税」を例に、不動産税制の有利・不利が制度変更などで180度変わることもあること、安易に無資格者の甘言に耳を傾ける危険性などにも言及しています。

最終章 不動産業界革命前夜

この章では、いまだに「だまし」が行われている業界を憂慮するともに、著者の考える「理想の不動産取引の未来像」について言及。

不動産とテクノロジーを融合させた「不動産テック」の可能性に触れながら、最近の業界の動向を紹介しています。

特に著者が注目するのは、仲介業者を通さない「直取引」の可能性で、専門家のサポートを「必要に応じて」利用する売主・買主が主体の取引が実現できる時代も夢ではないとしています。

「不動産屋にだまされるな」の感想

不動産屋に騙されるな

本書で最も評価すべきは、現役の公認会計士が書いている本であるという点です。

国家資格を取得するだけの知識と、それによって積み重ねてきた業務経験がもたらす知見は、自称不動産コンサルタントやブロガーとは一線を画すものと言えるからです。

著者はその点で、年間1,000件もの不動産に関する相談を受け、独占業務として財務・会計に関するコンサルティングを行っている実績のある人物であると言うことです。

そのため、第4章の「節税」に関する記述は、資料として信頼かつ有効に活用できる内容でしょう。

また、コンサルティングの実績から、「マーケティング的には売れないときに値段を下げるのは愚策」と指摘。不透明な価格設定で不満の多い不動産取引の現状に一石を投じています。

一方、不動産取引の未来像として、ユニクロやLCC航空のような業界の革命が起こりえるとしながら、実際には撤退や苦戦の事例しかない現状を紹介することにとどまっています。

また、公認会計士という財務のプロからのアドバイスとして「借りるより買うほうが得」で、「買うなら早いほうがいい」としながら、実際に買う決断のため不動産業者の言いなりにならない知識と経験をつけるには「2年かけても短すぎる」としているなど、読者を混乱させる不整合な記述になっているのは残念です。

しかし、現状を把握した的確な内容なので、実際に不動産売買を考えなければならない状況に直面している人にとっては、「闇夜の強力なヘッドライト」のように、進行方向の障害物を照らして危険を察知できるようにする、強力で有効な情報源となっています。

なお、マンション購入初心者の方には、こちらの書籍よりも以前にレビューをした以下の「本当に役立つマンション購入術」がおすすめです。

【参考】本当に役立つマンション購入術(著・のらえもん)を読んだ感想

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