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「ソニーはなぜ不動産業を始めたのか」を読んだ感想【著・茂木俊輔】

ソニー不動産

ソニーと言えば、世界規模でその名が知られた日本を代表する企業です。

そのソニーの名を冠した不動産会社の設立が報じられた2014年、経済界から産業界までを巻き込んで、大きな注目を集めることになったのがソニー不動産です。

もちろん、そこには「世界のソニーがなぜ畑違いの業界へ足を踏み入れるようなリスクを冒すのか?」といった野次馬根性的な興味も多かったことは否めません。

しかしそれ以上に、不透明な取引が横行するなど、「自分の財産」でも比重の大きい不動産をゆだねるには心許ないと感じていた人が多く、合理的な経営で名を馳せたソニーの参入によって「風穴が開けられるのでは?」という期待感も大きかったようです。

本書では、いまも期待値が下がっていないそのソニー不動産が創業するに至った経緯を、関係者の証言をもとにつなげながら描き出した、ドキュメンタリー的な企業物語です。

「ソニーはなぜ不動産業を始めたのか」の基本情報

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  • タイトル:ソニーはなぜ不動産業を始めたのか
  • 著者:茂木俊輔(日経BPビジョナリー経営研究所編)
  • 出版社:日経BP社
  • 価格:1,500円
  • 発行年月日:2014年12月24日 第1版第1刷
  • 評価:星4個(5点満点中)

本書をおすすめしたい人

  • 不動産売買のために情報収集をしたい不動産初心者の方
  • ソニー不動産立ち上げ時の内幕に興味がある方
  • 日本の不動産市場の抱える問題を知りたい方

「ソニーはなぜ不動産業を始めたのか」の概要

都会のビル

著者は、日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社後、記者として建築・不動産関係雑誌に携わり、現在はフリーランスで取材・執筆・編集に従事。

本書は、ずばりタイトルどおり、電子機器メーカーとして世界に名を馳せたソニーが「なぜ畑違いの不動産業者に参入しようとしたのか」という疑問に答えるために、キーパーソンへの取材をもとに解き明かそうとしたドキュメンタリー的な創業物語になっています。

本編は6章で構成され、各章の概要は以下のとおりです。

PART 1 事業が始まった瞬間

社内でも懐疑的な声が多かった不動産業での新規事業の立ち上げの経緯を、キーパーソンの証言を織り込みながら再現。

ビジネスモデルの参考例にスターバックスが使われたこと、グローバル展開をしていたソニーだから日本の不動産業界がアンフェアであることが理解されやすかったことなどのエピソードが、意思決定をもった人たちのリアルな会話で語られていきます。

PART 2 なぜいま「不動産」なのか

中古住宅のマーケットを活性化させる施策が打ち出されるなど、既存住宅への注目度は高まっています。

一方で、国土交通省の作成したグラフから、住宅資産への投資額が増えているにもかかわらず、資産としての形成に結びついていないことを指摘。

その原因として、税制上の耐用年数が影響していることを挙げ、国が抜本的な見直しに着手していることにより、今後はマーケットが大きく変化することを予測した起業だったとしています。

また、取引を阻害する要因となっている中古住宅取引の不透明性を取り上げて解説。売買を依頼する一般の人と業者の間に情報量のギャップがあり、それが業界への不信感の元凶としています。

こうした背景を説明することで、マーケットの活性化に必要な点を整理し、「プレイヤーが安心して参入できる中古住宅取引の市場を育てるため」という、ソニー不動産が掲げる理念の源泉を解き明かしていきます。

PART 3 なにが「新しさ」なのか

この章では、旧態とした不動産業界にソニーならではの合理化を持ち込んで、利用者の利便性を図るための仕組み作りを解説しています。

PART 4 なぜ「人が集まる」のか

本書執筆時の2014年10月時点で、ソニー不動産の社員数は50名。

立ち上げに際して、業界経験者の公募やヘッドハンティングを行い、新規採用者には専門の執行役員があたるなど、人材育成を重視するソニー不動産の理念と実践を紹介しています。

PART 5 なぜ「高く」売れるのか

顧客満足度を最重要課題として掲げるソニー不動産にとっての最大の目標である「高く売る」ことの仕組み作りと、不動産管理を行うプロパティ・マネジメントとの連携で資産価値を上げる手法などを解説しています。

PART 6 なぜ「事業」が動き出したのか

ソニー不動産が業界のみならず社会全般から注目を浴びることになった根本的な理由とも言える「不動産を選んだ理由」を理解するための周辺の事情が説明されています。

そして、ソニー不動産が不動産業界に持ち込もうとした「新しい合理的なルール」に触れ、そのルールの実現によって「日本を良くするため」というシンプルかつ根源的な目標を共有できたことが、不動産業への船出をトントン拍子で進める原動力になったことを明らかにしていきます。

なお、巻末には、ソニー不動産の代表取締役社長の西山和良氏と、新規事業の窓口として最初の裁可を下すポジションにいたソニーモバイルコミュニケーションズ代表取締役社長兼CEOの十時裕樹氏へのインタビューが掲載され、本編との整合性を当事者の発言で確認できるように構成されています。

「ソニーはなぜ不動産業を始めたのか」の感想

ビルと街灯

本書は、ソニーというブランド力を有する世界的な大企業が、未知の分野である不動産業界へ打って出た背景を解き明かすルポルタージュ的な読み物です。

その一方で、解き明かされた背景からは日本の不動産市場が抱える問題点が浮き彫りとなり、その解決方法の可能性を示すことで、普遍的な不動産ビジネスの理論書としての役割も備えています。

つまり、なぜ日本の不動産市場は不透明なのか、なぜ不動産の売買で顧客満足度が低いままなのか、という問題提起をするとともに、ソニー流の企業文化を導入することで突破口を開こうとしているブレイクスルーのためのノウハウ書としても読めるわけです。

内容は、企業時のエピソードの比重が大きいので、どうしても「ソニーだから」という先入観が邪魔をして、内容を普遍化しづらい部分が多いのは残念です。

しかし、慣れない不動産売買のために情報収集を始めようという初心者にとっても、より実践的で革新的な方法論を行間から読み取ることができる本書は、大いに役に立つものと言えます。

ちょっと手間はかかりますが、まずはソニー不動産の立ち上げという劇的なイベントの内幕を楽しんでから、その裏に秘められた不動産取引改革のヒントをチェックしていくという二段構えで本書に接することをお勧めします。

なお、ソニー不動産のマンション・戸建て住宅の売却サービスの詳細は次の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はそちらをご参考にしてください。

【参考】ソニー不動産(マンション売却)の口コミ評判

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