不動産を売却せずに活用するリバースモーゲージのメリットとデメリット
人口減少や年金不安など、日本の老後問題には暗雲が垂れ込めているといわざるを得ません。そうした現状を少しでも打破すべく、不動産という資産に新たな活用の選択肢として用意されているのが、リバースモーゲージという制度です。
ライフステージが変わることによって、不動産との関わり合い方も変化します。結婚や出産を機に「終の住み処」として購入したマイホームも、子どもの独立や定年退職といった転機が訪れれば、それまでどおりに使い続けることが困難になることもあるでしょう。
空き部屋が多くなって掃除や整理がたいへんだとか、通勤がなくなったので周辺環境を重視した土地で老後をエンジョイしたい等々。自宅不動産という大きな資産があれば、売却による資金化で、こうしたライフステージの変化に対応した住み替えも可能です。
でも、売却で資産を手放してしまうのは不安だし、買い換えは売却と新たに購入しなければならないから手間も増える…。
そこで注目されたのが、売却せずに住み替えを可能にするリバースモーゲージ。その概要と、メリット・デメリットをチェックしておきましょう。
リバースモーゲージの概要
リバースモーゲージは、所有する自宅不動産を担保にした融資の一種です。日本語では、「逆抵当融資」になります。
不動産を担保にして融資を受けることから、住宅ローンを思い浮かべる人も多いようです。しかし、リバースモーゲージは、次の点で住宅ローンと異なっています。
1.所有する(=住んでいる)不動産を担保の対象とする
住宅ローンでは、新築・中古を含めて、抵抗権の設定を所有する前(自分が住んでいない状態)に行うのが一般的です。
それに対してリバースモーゲージは、すでに所有する(=住んでいる)不動産に対して抵当権を設定し、融資を行います。
2.契約終了時に担保不動産が売却される
住宅ローンでは、融資額と利息を分割して返済し、残債がゼロになった時点で契約が終了。担保の不動産はそのまま所有状態が継続します。
リバースモーゲージでは、主に契約者の死亡によって契約が終了しますが、その時点で担保不動産が売却され、残債を一括で返済することになります。したがって、担保不動産は契約終了時をもって契約者の手を離れることになります。
3.融資額を分割して受け取る方法もある
住宅ローンは、契約を結ぶことで原則として買主側の支払いを金融機関が肩代わりします。売買契約は、売主とローン契約をした金融機関のあいだで全額が決済されます。
買主は、ローン契約をした金融機関に対して、肩代わりしてもらった代金と利息を、分割して支払っていくわけです。リバースモーゲージは、契約する不動産所有者に対して、直接融資を行うシステムです。
契約時に担保の評価額を一括で融資するケースもありますが、月ごとに分割で融資を限度額まで行う方法が一般的です。
リバースモーゲージのメリット・デメリット
リバースモーゲージのメリットは、なんといっても住み慣れた我が家にそのまま住み続けながら、老後の資金となる融資を受けることができる点です。
不動産の資金化では、売却にしろ賃貸にしろ、いずれも所有者がそのままの状態で住み続けるかたちでは実現できません。唯一、住み続けることができるケースは、売却後に買主と賃貸借契約を結ぶこと。
しかし、買主の理解を得る難しさに加え、そうした条件付きでは、売却の可能性と条件がかなり厳しくなることを覚悟しなければならないでしょう。
リバースモーゲージは、契約が継続しているかぎり、所有者として住み続ける権利は失いません。
また、65歳を過ぎると、新たなローンを受け付けてくれる金融機関はほとんどありません。ローンの組み替えで条件を変更し、老後資金を捻出するといった手段はほとんど選べなくなってしまいます。
しかし、リバースモーゲージなら年齢制限を設けていないので、こうした目的での利用も可能になります。
デメリットは、融資額が売却想定価格に比べて少なくなること。これは、リバースモーゲージが契約終了時に、該当不動産の売却によって融資額を回収するという構造を取っているため、仕方がないと言えるものです。
というのも、金融機関側のリバースモーゲージの決済は、契約終了時まで先送りされます。そのあいだ、不動産相場の下落などのリスクを割引かなければ、ビジネスとして成り立たないからです。
また、利用者のリスクとしては、支給額の減額があるかもしれないことが挙げられます。これは、リバースモーゲージの多くが変動金利を採用していることによるものです。
リバースモーゲージでは、月々の分割融資から元金の利息を引いた金額が支給されます。つまり、金利が上昇すれば、手取りが少なくなるわけです。
利用者側の最も深刻なリスクは、契約期間を超えて契約者が生存しているときに発生します。
リバースモーゲージの契約期間は、不動産の評価額と、契約者の希望する支給額によって決められます。期限の延長は、不動産が異常な値上がりをして再評価されることでもないかぎり、ありません。
逆に、不景気で評価額の下落幅が大きくなれば、担保割れによって契約期間の終了を待たずに売却、ということもあり得ることが契約書には書かれているはずです。
その場合は、毎月の支給金はもちろん、住んでいた不動産も売りに出されてて失ってしまうことになります。
まとめ
リバースモーゲージは、居住不動産を所有する人が老後の生活資金のサポートを受ける制度として、チェックしておいて損のないものです。
しかし、融資額が売却金額より低いこと、景気の動向などによっては融資期間が短縮されることもあること、なによりも契約期間の終了時に担保不動産を手放さなければいけないことなど、生活を破綻させかねないリスクもあります。
メリットとデメリットをしっかり理解し、自分の老後の人生設計に活用できるかどうかを検討したうえで、利用するようにしてください。