売却できない不動産を断捨離(処分)する方法は?
断捨離という考え方が流行し、いまやひとつのライフスタイルとして定着した感があります。
使わなくなっただけでなく、将来を予想して使うはずがないと判断するものを処分し、日常生活の重荷とせずに健康に生きようという教えです。
確かに、注意をしていても、不要なものの処分はついつい後回しになってしまいがち。意識して身の回りの整理を行うことは、現代人にとって身だしなみとも言えるかもしれないのに…。
ところが、どんなに不要と感じても、その処分を国が原則として認めないものがあります。その代表的なものが、人の命と戸籍、そして不動産の所有権。人の命と戸籍を個人の都合で処分するわけにはいかないのは、説明するまでもありませんね。
しかし、不動産(マンション・戸建て住宅・土地)の所有権については、どうでしょう?
誰も住まなくなってしまったり、老朽化や地理的条件の悪さなどで賃貸需要もなかったりすれば、その不動産はお荷物でしかなくなってしまいます。資産価値が低ければ、有効活用も売却も困難になるでしょう。
いまや、「タダでもいいから引き取ってほしい」という訴えは、通用しなくなっています。産業廃棄物のように、有料でもいいから処分したくてもできないと言われているのがお荷物不動産なのです。
そこで、お荷物不動産の処分の可能性について検証し、有効な方法があるかどうかを確認してみましょう。
不動産の所有権を放棄できない根拠
日本の法律に、「不動産の所有権は放棄できない」と明記した条文はありません。
しかし、他の所有権が「無主」すなわち誰の所有でも無いことを含めた所有権についての定めをしているのに対して、不動産の所有権についての規定はたった2つのみ。
1つは、不動産の所有権を主張するときは登記が必要だ、というもの。もう1つは、所有者がいなくなれば国庫に帰属、つまり「国の所有」にしますよ、というもの。
前者は、現在の日本国内で、登記がなくても所有できる土地は事実上存在しないことを踏まえての、不動産譲渡の際の所有権トラブルを防ぐための規定であることがわかります。
後者は、不動産の所有権を放棄できるかもしれない唯一の機会と関係するので、少し詳しく説明しましょう。
相続の発生による不動産所有者の不在について
前述のように、民法ではわずかに一文ですが、不動産の所有者がいなくなる場合に言及して、その際の処置を「国庫に帰属する」と定めています。
ということは、一般的な所有権放棄が可能かどうかは別にして、所有者がいなくなる状態はあり得るということになります。
法的に見た「所有者がいなくなる」という状態は、主に次の2つのケースが考えられます。
【1】.所有者が死亡して、相続が発生したにもかかわらず、相続人に該当する人がいない場合。
【2】.所有者が死亡して、発生した相続を相続人が放棄した場合。
特に2のケースでは、相続放棄という意思表示によって所有権が国庫に移ることになるため、これが唯一の「自発的に不動産所有権を放棄できる方法」と言われることもあるようです。
ただしこの方法は、相続発生時でなければ利用できないのは、言うまでもありません。
まとめ
不動産の所有権は、他の所有権と異なり、自由に断捨離することができません。
一般に、「タダでもいいからもらってほしい」と所有者が思っているようなお荷物不動産は利用価値が低く、売却という処分方法も困難であると考えられます。有効に利用できないうえに、維持管理の費用や税金といった出費を継続して負担しなければならないことを考えると、当然かもしれません。
このような背景から、過去に可能と言われた「自治体などへの寄贈」も、現在では受け付けなくなっているのが実状です。
唯一、国に所有権をもらってもらえる相続放棄も、利用できる機会はきわめて限定的。それに、相続による所有権の継承を放棄するわけですから、所有している不動産を「捨てる」ことにはなりません。
つまり、不動産の所有権を放棄する方法は、実際には存在しないことになります。
自分が要らないものを誰かにあげたい場合には、「使わない」けれど「使える」ことがポイントになります。しかし、お荷物不動産の場合、「使わない」のは「使えない」から。
冷静に考えれば、「使えない」ものを欲しいと思う人がこの世の中に存在する確率は、限りなくゼロに近いことがわかるはずです。そして不動産は「使えない」だけでは済まず、税金の負担や、安全で健全な状態に保つ責任を負わなければならないのです。
唯一、その負担や責任から逃れるチャンスは、相続発生時に相続放棄することです。しかし、この方法にも問題があります。相続放棄では、お荷物不動産だけを選んで放棄ができないのです。
つまり、売却に適さない不動産は、残念ながら断捨離するわけにいかず、責任をもって所有者が管理するしかない、というのが日本の現状になります。
原野商法と呼ばれる、未開発の利用価値の低い土地を買ってしまった人に対して、「処分を手伝います」といった手数料だけをだまし取るような商売も横行しています。不動産の所有権についての最低限の知識を備えて、そうした甘言には惑わされないように注意してください。
なお、あなた自身が価値の無い不動産だと感じている物件でも、実際に査定してみると価値があったなんてケースもあります。ですので、「こんなゴミ物件…」とあきらめる前に、まずはイエウールのような不動産無料査定サイトを活用して、本当に無価値のマンション・戸建て住宅なのかを確認するようにしましょう。
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