マンションを親族に売却する場合に気をつけておきたい3つのポイント
所有するマンションを売却しようと思うきっかけは人それぞれ。
ライフプランに沿った計画的なものであれ、やむにやまれず手放さなければならないのであれ、一生に1度と言われるような大きな買い物を手放さなければならないストレスは大きいはずです。
そのストレスの最大の原因と言えるのが、「見えない不安」ではないでしょうか。
不慣れな取引では、自分がやらなければならないことから相手がやろうとしていることに至るまで、「見えないこと」ばかりに対処しなければなりません。
なかでもいちばん「見えない」のは、買い手として手を挙げる人の「顔」でしょう。
売却するマンションをお金に換えてくれる最重要人物でありながら、ほとんどの不動産取引では初対面で、親交を深めることもないまま売買契約を迎えることになります。
この不安を回避するには、氏素性をよく知る人に買ってもらうことになるわけです。
その適任と言えるのが親族なのですが、果たしてその選択は当初の「不安」を解消する以上にメリットをもたらしてくれるのか、注意すべき点はないのかを考えてみましょう。
マンションを親族に売却するメリットとは?
まず、親族に売却するマンションを買ってもらえる場合にはどんなメリットがあるかを考えてみましょう。
「顔」の見えない初対面に等しい人ではなく、氏素性の知れた親族を売却相手に選ぶ理由のひとつに、売却をオープンにしなくてもいいから、というものがあります。
一般的なマンションの売却活動では、買い手を募るために売却状態であることをオープンにする必要があります。
具体的には、マイソクと呼ばれる物件資料やチラシのを作成して貼り出したり、同業者へファックス配布したりすることになります。
媒介契約の種類によっては、指定流通機構が運営するレインズ(物件情報のネットワークシステム)への登録が義務付けられています。つまり、登録業者であれば日本全国どこでもその物件情報にアクセスできるようになるのです。
こうした状態が、「顔」の見えない初対面に等しい買い手を呼び寄せてしまうわけですが、それを防ぐには情動を非公開にするしかありません。
最初から親族を対象にマンション売却を進めるのであれば、ピンポイントで交渉することになるので、情報を公開しなくても済むわけです。
ほかにも、「経済状態などがある程度わかっているので決済の心配が格段に減る」「引渡しといったスケジュールの相談をしやすい」といった、縁浅からぬ関係ならではの、交渉のしやすさをメリットとして挙げることができるでしょう。
マンションを親族に売却する場合に気をつける3つのポイント
以上のように、不慣れに起因する、しかし無視することができないほど大きな不安を霧散してくれる親族との取引ですが、良いことばかりとは言えないのも事実です。
ポイントとなる3点に絞って、説明しましょう。
1. 所得税を免れても別の課税対象になる
不動産取引では、さまざまな税金が課せられます。
なかでも売却金額に応じて課せられる所得税は、取引の対象が決して少額のものではないので、どうしても目立って気になる項目になると言えるでしょう。
しかし、そもそも所得税は、その取引によって所得=利益が生じた場合に課せられる税金です。
つまり、課税価額は売却金額そのものではなく、そこから購入代金や売却の諸費用を差し引いたものになります。
この残額がプラス(すなわち利益が出た状態)で、課税基準の最低限を超えていれば、課税されるわけです。
逆に、残額がマイナス(すなわち赤字)だったり、わずかなプラスで課税基準に達していなければ、所得税はゼロなのです。
例えば単純なケースで、マンションを1億円で売却しても、買った値段が1億円だったら、所得税は課せられません。
ところが、これが親族へのマンション売却の場合、「所得税非課税」とならないことがあるのです。
精神的な不安を大幅に低減してくれる親族との取引ですが、税制的には一般の取引とは「異なる」と見られてしまうことがその理由です。
実際には、その取引で売主が得た売却金額を、所得ではなく「譲渡」とみなして課税されてしまうのです。
2. 特別控除で節税できなくなる
もうひとつも税制面でのハンディキャップです。
居住用として税務署が認める不動産の売却では、税制に定める要件を満たしていれば、3000万円を上限に課税価額を控除できるという特例があります。
つまり、住んでいるマンションを売却した場合、購入額や売却費用を精算してプラスになっても、3000万円までなら課税されません。
しかしこれも、親族との取引が控除の要件から外れるため、利用できなくなってしまうのです。
3. 買換えのための住宅ローンが組み難いかもしれない
マンションをストレスなく親族に売却して、ワンステップ上の住まいを手に入れるためには、住宅ローンの利用も重要でしょう。
しかし、非公開の売却活動で親族と取引するようなケースでは、金融機関が通常よりも審査を厳しくすることがあるのです。
これは、架空の取引で住宅ローンを利用されるなどの不正取引を、親族のような近い間柄なら示し合わせて実現しやすいことを危惧する防衛策と考えられます。
取引の実態を示す売買契約書や重要事項説明書などの公式な書類が整っていれば、問題になることはないでしょう。
その代わり、親族当事者間の簡略的ではなく、業者を介した手続きが求められることになり、必然的に第三者への手続き依頼や交渉、それに伴う手間や費用が発生することになります。
まとめ
マンション売却は、誰をも知れぬ人のなかから買い手を探して交渉をするのが一般的な取引です。
それだけにストレスも大きく、それが売却を躊躇させる大きな要因になったりもするのです。
その要因を排除するには、氏素性を知る人に買ってもらうのが一番。
しかし、買主が親族の場合、税金面や住宅ローンといった、お金に直接影響する弊害が発生するので、注意が必要です。
制約を受ける親族の定義や範囲を、シロウト考えで判断するのは危険です。
せっかく精神的な不安を低減するために選んだ親族との取引。マンション売却後にお金という現実的な不安を抱えないためには、すべてを非公開にと意地を張るのではなく、必要に応じて専門家に任せることも考えてください。
【参考】イエウールの口コミ@良い点・悪い点や使い勝手を検証