同じマンションなのに売却金額が変わってしまう事情と対処法
マンションを売却しようとする際に、同じマンションで売り出しがバッティングする場合があります。
それを知って、ライバル登場と敵愾心に燃えるのか、仲間が増えて注目を浴びることが出来ると喜ぶかは、売主の勝手です。
いずれも売主のモチベーションを上げてくれるような、朗報に感じるこの出来事。
でも、ちょっと待ってください。
果たして買い手からはどう見えているのでしょうか?
確かに、売却物件が増えることは、買い手にとっても選択肢が増える、望ましい状況です。しかも、考えていたエリア内、すぐ近くに比較できる対象が並んでいるのは、願ってもないことかもしれません。
しかし、比較材料になっても、購入に至らないのでは、売主にはメリットがありません。
それに比較材料になると言うことは、買い手にとってのメリットをアピールできなければ、存在しないのも同然になってしまうのです。
2番手3番手の買い手が続けば、少しは状況も違うかもしれません。ただ、そうであっても比較されて売れ残ったという事実は残ってしまいます。
そして、1番手で比較した買い手の理由が解消されなければ、次に選ばれる可能性は決して高くならないのです。
では、同じマンションで売却が重なったときには、どんな罠が潜んでいるのか…。その背景と対処法を見ていきましょう。
同じマンションにおける買い手目線の印象の変化
売主にはチャンスに見えた同じマンション内での売り出しの重複、買い手にはどう見えるのかを考えてみましょう。
同じマンションであれば、地理・周辺環境や築年数といった、売却に大きく影響する条件に関しては同じと考えられます。
大規模なリノベーションが施されていたりすれば、条件が変わることもあるでしょう。しかし、その際にはリノベーションの費用が加算されるだけで、基本的な評価を変えるものではありません。
ところが、同じマンションであっても、位置と方角はかなり違った印象を与えます。
1階と5階と10階、リビングの南向きと北向きでは、買い手にとって「同じマンションだから」と思えない条件の違いになるはずです。
もちろん売主側でも、こうした位置と方角の違いを織り込んで売却戦略を立てなければなりません。
とはいえ、同じマンションにライバルがいなければ目立たなかった位置と方角の違いが、あることによって目立ってしまうのです。
ただ、目立ち方には良い悪いがあり、一概に目立つことがマイナス要因にはなり得ません。
しかし、目立ってしまうからには、それを「悪目立ち」と買い手に捉えられないよう努力する準備が、売主側に必要となってしまうのです。
例えば、1階の物件を売却しようとしているときに、7階の物件が売り出されたとします。
値段が同じ設定であれば、階数の利便性を取るか、眺望を選ぶかに分かれるでしょう。
問題は、内覧に来た買い手の印象です。
エレベーターに乗り合うのを避ける人も少なくないため、1階の物件が必ずしも人気がないわけではありません。
しかし買い手は、同じマンションでほぼ同条件の売出があることを知っているか、内覧に来て発見する可能性が高いのです。
マイソクやネット上のデータや写真で比較して1階に傾いていたとしても、実際に2つとも内覧してしまうと、その印象が逆転する可能性は低くないのです。
逆でも同じことが起こりえるでしょう。上の階のほうがいいイメージをもっていたのに、期待した眺望がなかったり、エレベーターの不便さを感じたりすれば、下の階の良さに気づくわけです。
同じマンションで売却を成功させるには?
このように、物件やエリアの違いほど大きくないと思っていた同じマンションという条件でも、売り出しが重なれば決定的になりかねない差になりかねません。
一般的に、買い手にマイナスの印象を与える比較ポイントの解消には、「価格を下げる」という手段をとることになります。
お買い得感で、浮かび上がったマイナスの印象を打ち消そうとするわけです。
しかし、同じマンションという条件の下では、この値引き作戦が裏目に出ることもあるので、注意が必要です。
実際に内覧で、比較部分をほぼ同時に経験できてしまうため、この値下げがマイナスの打ち消しになりきらず、かえって強調してしまうのです。
ほとんどの買い手は、安い買い物をしたいわけではありません。
住まいとしても、資産としても満足できるマンションを探しているのです。
なので、マイナス面があるから値引きされていると感じる物件を見れば、躊躇してしまうわけです。
こうした買い手の躊躇への対処法としては、物件のプラス面を強調することが有効になります。
前述の、上の階を見に来た買い手が下の階の(あるいはその逆の)良い面を見つける視点を応用すれば、位置や方位に関する一般的なマイナス面は、プラスに転ずることが出来るということです。
まとめ
北海道のマンションでは、寒い時期が長いので、西日が長く当たる部屋のほうが好まれるそうです。
通勤や通学が同じ時間帯に重なる居住者が多いと、階段に近い低層階が好まれます。エレベーター利用者が多いため、乗り切れないことが増えて、イライラするからです。
大きな地震があったあとには、タワーマンションでさえも下層階の人気が高まったそうです。
同じマンションという条件で競合した場合でも、プラス面を探すことはいくらでも可能です。
逆に、安易に値下げで対処しようとすると、マイナス面を強調することになりかねません。
自分が住んでいて良いな、便利だなと思っていたことを思い出して、売却戦略に役立てる努力を惜しまないでください。
また、経験値の高い仲介業者の担当者なら、マイナスをプラスに転じる事例も保っているはず。
同じマンションで売却が競合している場合は、対処法を提案できる業者を選ぶことも、成功率アップにつながるはずです。
【参考】マンション売却の成功率をアップさせる「ターゲットの絞り方」