賃貸しているマンションを賃借人に売却するメリットとデメリット
マンションを所有していても、そのマンションに住んでいるとはかぎりません。
収益物件として購入した場合は言うに及ばず、親の収益物件の相続、別居していた親が住まなくなった物件を貸し出して管理するなど、マンションを賃貸するシチュエーションは意外に身近にあるものです。
ただし、このような自主的に所有したわけではない賃貸マンションは、持てあますことも多かったりするのではないでしょうか。
売却するのが面倒で所有を続けてはいたものの、そんな負担がどんどん膨らんでいけば、面倒だと避けてばかりもいられなくなるでしょう。
そこで売却を考えてみるものの、やはりハードルは高いというのが現実。
ただ、ちょっと視線を変えてみて、まず賃借人に購入の意思があるかどうかを確かめてみるのも、ハードルを下げるひとつの方法だったりします。
売り出す前の、いわゆる「水面下」の売却活動として選択肢に入れておきたい「賃借人への売却」についてのメリットとデメリットをチェックしておきましょう。
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賃借人にマンション売却を持ちかけるメリットについて
前提として知っておかなければならないのは、賃借人がいるマンションであっても、売却する際に賃借人の承諾などは一切必要ないということ。
つまり、賃借人にとっては、オーナーが変わることに対してメリットもデメリットもない、ということです。
だから、そのマンションの売却を考えたら、まず賃借人の意向を確かめるといった配慮は一切必要ありません。
そのうえで、賃貸人であるマンション所有者にとって、最初に賃借人の意向を確かめることは、次のようなメリットがあります。
1.売却活動を始める前に売却できる可能性がある
マンション売却のハードルを高くしているのは、まず仲介業者を決めて、売出価格を決め、購入希望者の対応をして、交渉をして……、といった手間と時間が掛かること。
賃借人に購入の意思があるかどうかを聞くのは、仲介業者を決める前でもできます。購入の意思があれば、そのまま売主が手続きを進めてもいいですし、面倒であればその時点で仲介業者に依頼すればいいのです。
マンションの売却活動でいちばん心労がかさむのは、購入希望者が現われないこと。そのリスクを一気に解消してくれる可能性があるのが、賃借人への売却と言えます。
2.売却活動をナイショにできる
賃借人との交渉は、いわば「インサイダー取引」です。もちろん、なんら法に触れることはありません。
仲介業者と媒介契約を結ぶと、一般媒介契約以外はレインズへの登録など、不特定多数への情報公開をしなければなりません。
一般媒介契約であっても、購入希望者を見つけるためには、売却物件であることを各方面へアピールする必要があります。
しかし、賃借人に購入の打診をすることは媒介契約にも触れず、内々に進めることができるのです。
3.売却に掛かる費用を抑えることができる
賃借人に購入の意思があれば、業者との媒介契約前に買主が決まることになります。
購入希望者を探すことに始まり、内覧などの購入希望者の対応などといった売買契約までの手続きを省略することができるので、売主が自力で取引を仕切ることも夢ではありません。
自力で済ませるということは、それだけ安く済ますことができるということ。
もちろん、手間とトラブル回避を考えれば、業者に必要だと思う部分だけを依頼するのも賢明でしょう。その場合でも、ゼロから買主を探す売却活動よりは、かなり費用を削減できるはずです。
賃借人にマンション売却を持ちかけるデメリットについて
二つ返事で賃借人がマンション売却に応じてくれれば苦労はほとんどないでしょう。
そんなに甘くないのが現実です。最も滞る可能性が高いのは、売却価格の交渉。
高すぎると思われれば交渉は決裂。ゼロから買主を探す売却活動を検討しなければならなくなります。
「水面下の交渉」という意味では、賃借人から「足下を見られる」ような対応に出られることがあるかもしれません。
「早く処分したいのではないか」「表立って売り出すことができないのではないか」といった邪推をされては、まともな売却交渉ができなくなってしまいます。
また、賃借人のペースで交渉や手続きが進められてしまうと、ずるずると売買成立までの期間が長引いてしまうことにもなりかねません。
まとめ
マンションを売却しようと考えたときに、そのマンションに居住しているのではなく賃貸している場合には、まず賃借人に購入の意思があるかどうかを確かめてみましょう。
もしその意志があれば、売却活動のハードルを一気に下げることができます。
その後の交渉や手続きの進め方によっては、大幅に費用も削減することが可能になります。
媒介契約などの法的な縛りがない状態でも、賃借人の意志を問うことはなんら問題ありませんので、ダメ元でもなんら損失にはなりませんので、ぜひトライしてみてください。
ただし、この交渉は「水面下」のものになるので、賃借人とのやりとりは逆に法的な保護がないことになってしまいます。
また、「水面下」であるがゆえに、賃借人からのリクエストもシビアになることがあったりします。
感情的にこじれてしまうと交渉は進まなくなってしまうので、くれぐれも慎重を期すようにしてください。
賃借人に脈があり、交渉が進展しそうであれば、そうした経緯を理解して仲介をサポートしてくれる業者に依頼してしまうことも、売却の成功率を上げる戦略になるでしょう。