マンションの売却で内覧を受けるときに準備すべきこと
マンションの売却活動のなかで、最大の山場と言ってもいいのが内覧です。
売り出す前には、「あれこれ注文を付けずに値切らず買ってくれる人が現われないかなぁ……」と淡い期待を抱くものの、現実はそんなに甘くはありません。
とにかくその売却マンションに興味をもってくれる人が現われるのをひたすら待つ日々が続き、仲介業者の担当者から「問い合わせがありました」という連絡に一喜一憂することになるのです。
仲介業者から連絡があるのなら心配はないと思うかもしれませんが、さにあらず。「問い合わせ」はあくまでも「問い合わせ」でしかありません。つまり、「問い合わせ」の段階では「どのマンション」にするかを検討しているにすぎず、必ずしも「そのマンション」に決めようとしているわけではないのです。
「どのマンション」がいいかなと迷っている人が、次の段階の「そのマンションもいいかな」と思うようになるためには、実際に「そのマンション」をその目で確かめるという、より具体的なアクションが必要になるはずです。それが内覧になります。
であるならば、内覧は売主にとって、購入希望者に直接アピールできる最大にして最高のチャンスになるわけです。
そこで、マンションの売却活動を始めて内覧を受けるときに失敗しないための、準備について考えてみましょう。
売却活動のなかでの内覧の位置づけについて
マンションの売却活動は、売主が「売ります!」と決めた時点から始まります。具体的には、仲介業者を選定して媒介契約を結び、買い手とのコンタクトの準備が整った時点になるでしょう。
媒介契約の種類によっては、レインズ(指定流通機構)に売却マンションの情報が登録され、それをチェックしている買い手側の仲介業者などから問い合わせが入るようになる、というわけです。
相手業者の問い合わせには、「レインズ情報内容」と「まだ売却が決まっていないかどうか」を確認する意味があります。
そうした確認情報の入手を経て、買い手に興味があれば、売却活動は次の段階に進むことになります。次の段階となるのが実地の確認、つまり内覧ということです。
売却しようとしているマンションは、所有者の承諾なしには第三者が勝手になにかをすることはできません。ということは、売却が決まって買主に所有権が移るまでは、相手を室内に入れることを正当に拒否することもできるわけです。
しかし現実には、内覧を拒否された買い手が、そのマンションへのアプローチを続ける可能性は、かなり低くなるでしょう。よほど買い手側にメリットのある条件が他に提示されている場合を除いて、重要な情報開示のひとつである現地確認を封じられては、不安材料を消すことができないからです。
マンションは、売手にとっては財産という意識が強いものです。そのために、第三者に対して過剰な防衛意識を抱くことがあるのも仕方ないことかもしれません。しかし、買い手にとっては、大切な資金と交換する商品なのです。
商品であるからには、できるだけ自分の目で見て、触って、確かめて、納得してから買いたいというのが、一般的な消費行動でしょう。スーパーの店頭ですらそうした行動を受け入れるサービスが提供され、買い物客の満足度をアップさせる努力を行っているわけです。
1円、2円の差を気にする、スーパーの店頭でさえそうなのです。数百万円から数千万円という値が付いているマンションを買おうと言うときに、それが拒否されるのでは、心証も害することになるでしょう。
マンションでは残念ながら、試食を提供することはできません。しかし、内覧によって実地を経験することで、そのマンションを「試した気分」になることは可能です。
この「試した気分」があるかないかで、買い手の判断が大きく左右されることは想像に難くありません。マンションの売却活動において、内覧が重視され、よほどのことがない限りは断ってはいけないと言われるのは、このような心理的な背景が大きく影響しているからなのです。
内覧の効果をアップさせるために準備できること
内覧を断ってはいけないのは理解できても、売主にとって負担が大きいことに変わりはありません。
そうであれば、積極的に内覧に取り組んで、売却活動の効果アップに貢献できる対策を取ったほうがいいと思いませんか?
1.内覧者を迎える準備
内覧者を迎えるための準備でまずやっておくことは、片付けと掃除でしょう。特に玄関は「家の顔」とも言われる場所です。玄関ドアの外側などは、普段はなかなか掃除をしないところ。ネームプレートや新聞受けなどの汚れを拭き取っておくだけでも、第一印象がずいぶん変わってくるでしょう。
照明が暗くなっていると、印象も悪くなりがちです。1本数百円の蛍光灯を変えておくだけで印象もアップできるのなら、安い投資ではないでしょうか。
内覧者が玄関の次にチェックしたいと思っているのは、ベランダの眺望です。ただし、眺望をなんとかするわけにはいきませんので、せめてベランダ周辺を片付けておくようにしたいものです。
そのほか、クロスや障子の破れやガラス戸などの破損があれば、ぜひ取り替えておきましょう。
2.内覧者への対応
内覧者に対して、特別な対応をする必要はありません。食事や酒などによる接待をしようとしても、効果は薄いどころか、逆に不信感を煽ってしまうかもしれません。
売主としてできることは、仲介担当者と打ち合わせをして、内覧者の案内手順や想定される質問への答えなどを考えておくことです。
室内などはすべて見せるのがベストですが、「ここはプライベートなので」とNG部屋をきちんと決めて対応することも可能です。その場でグズグズの対応を取らないことが、内覧の印象を良くするポイントと言えるでしょう。
まとめ
マンションの売却活動において、内覧は避けて通れないものと考えましょう。なぜならば、準備次第ではとても効果の高いアピールにつなげることができるからです。
事前の用意としては、片付けと掃除が重要です。特に、玄関とバルコニーは、内覧者の注目度が高いのに対して、居住者の意識が届かない場所になりがち。改めて扉やネームプレートなどの拭き掃除をしておくと効果的でしょう。
すべての部屋を見せるのがベストですが、居住中であれば寝室など他人に見せたくない部屋もあるでしょう。その場で考えるのではなく、あらかじめ仲介業者の担当者経由で「ここは遠慮してほしい」と伝えておいてもらえば、相手の心証も悪くせずに対応できるでしょう。
内覧は、試食できないマンションという売り物で唯一、相手に試すチャンスを与える機会です。それだけに、準備を整えて、相手の心証を良くする対策を講じていれば、売却活動にプラスになることは確実です。ぜひ、そのチャンスを活かして、マンションの売却を成功に導いてください。