マンション売却で買い手が気に入らないときの対策方法
「ひと目会ったその日から」咲くのは恋の花。
マンションなどの不動産取引も、これに似たような「ひと目ぼれ」があるという話をよく聞きます。もちろんその相手は物件ですが…。
また、気に入らないから取引が流れることも、よくある話。それもまた、物件の善し悪し、器量などを考えての判断ならば、売主だって諦めがつくというもの。
ところが逆に、買い手が気に入ったと言ってきているのに、売主の心にどうしようもなく納得できないわだかまりが出来てしまうことも、実はないわけではありません。
売却を決めて活動をしたものの、買ってくれるという人が現れたわけですから文句を言う筋合いなどないはず。黙って売買契約書に判を押せば、マンションの資金化は完了するのに…。
そんなわだかまりが生まれてしまう背景を取り上げて、リスクと対処法を考えてみましょう。
マンション売却で買い手が気に入らないときのリスク
最近でも、「俺は気に入った客にしか俺の商品を売らないよ!」などと主張する、頑固な人物がテレビで紹介されたりします。
マスコミではこうした人物をおもしろおかしく紹介するわけですが、実際にこうした取引が行なわれることは少なくなかったりします。
というのも、商取引というのは原則として、売るのも自由、買うのも自由、だからです。
法律では、「売る」と言った時点で取引は成立しますが、それまでは「売るも売らないも売主の自由」が許されることになります。
例えばスーパーなどでは、陳列した時点で「売ります」という意思表示をしているとみなされ、レジに商品を持っていったときに、「あなたには売りません」と断られることはまずないでしょう。
しかし、職人の手仕事による作品などでは、それが展示してあっても、作者の了承がなければ購入することが出来ないことも、決して少なくなかったりするのです。
職人の手仕事とは言えないものの、住み慣れた我が家だったり、譲り受けた恩義を感じていたりする不動産もまた、こうした「了承を必要とする取引」になる可能性を秘めていると言えます。
では、「売らないのも自由」だからといって、それがまかり通るのでしょうか?
売却マンションも、スーパーの陳列商品と同様に、仲介業者に依頼して売却活動を始めた時点で、「売ります」という意志を示したことになります。
条件の合う買主が現われれば、そこで自動的に取引が成立しても問題ないわけですが、取引成立の前に売主が「嫌だ!」という権利が残っているわけです。
住み慣れた我が家だったり、譲り受けた恩義を感じていたといった、心情的な理由があれば、例えその他の条件が提示どおりだったり、それ以上の好条件だとしても、取引しない自由が売主にあるのです。
その最たるものが、「買い手が気に入らない」というものでしょう。
取引といえども、人間のあいだで行なうものです。そこには相性というものが発生し、どうしても好き嫌いという感情が入り込んでしまいます。
条件が整っていても、「この人に自分が大切にしていたマンションを渡すのは嫌だ」という感情が湧いてしまうのはいたしかたないことなのです。
では、そうした場合に、どんなことが起こるのかを考えてみましょう。
まず、買い手の機嫌を損ねることになります。
買い手は、その売却マンションを購入するという意思表示のため、手付金などの納付を申し出るでしょう。
手付金を受け取ると、売主も取引に同意したとみなされます。本格的な同意は売買契約書を取り交わした時点ですが、その前に代金の一部とみなされる手付金の受け渡しがあることで、取引が進行している状態だと考えられてい舞うわけです。
これに対して、売主側から「売りません」という翻意を示すことは、取引の信義を破る行為であるとみなされてしまいます。
原則として、当事者のあいだで取り決めをしていなければ、手付金は解約手付、すなわち「解約するための準備金」であるとされることになっています。
売主がこの解約手付を受け取ってから取引を断ると、一般的に「手付の倍返し」で取引状態の解除ができることになっています。
また、買い手がさらに中間金などの追加費用を支払っていたり、売買代金の全額を用意して物件の引渡を求めている状態だったりすれば、売主からの取引中止は契約違反となり、違約金が発生することになるのです。
マンション売却で買い手が気に入らないときの対処法
このように、「売るのも自由、売らないのも自由」とはいうものの、事と次第によっては、売主の「売らない!」発言が売主自身の首を絞める、重大な損失を招くこともあります。
段階的に、そうした損失を避ける手段を考えてみましょう。
まず、買い手からの問い合わせや、内覧の申し込み、内覧後の交渉のあいだは、法的な拘束力が発生することはほとんどありません。
つまり、この時点までで、買い手の印象が悪いといった理由で取引を断っても、売主になんらかの責任が求められることはありません。
買い手側による買付証明書の発行も、法的な拘束力はないので、安心してください。
問題は、金銭や、契約書など印鑑証明書が必要な捺印のある書類などを交わしてしまった場合です。
これ以降は、交わした書類に記載された内容や、預かった金額によって、売主側が果たさなければならない責任も決まります。
まとめ
マンション売却では、売りだしたからと言って売却を途中で止めることも、買い手が気に入らないからという理由で断っても、原則として認められます。
もちろん、売却という目的を考えれば、買いたいという人がせっかく現われたのに断るのは重大な機会損失です。
しかし、意に染まない売却をして、後々まで悔やむことを考えれば、自分の感情を判断材料の上位に据えることも必要でしょう。
遠く離れた土地ならまだいいですが、近所で住み替えをしたり、年に何回か帰ることのある出身地での取引だったりすれば、売却したそのマンションを目にするたびに、苦い想い出となって後悔することにもなりかねないのです。
マンション売却は、大切な資産を資金化することが大きな目的です。しかし、大切な資産だからこそ、売却するときの気持ちも大切にするべきなのではないでしょうか。
どの時点なら断っても問題はないかをしっかりと把握して、売却する相手の顔が見える交渉や取引ができることも、マンション売却の満足度をアップする方法なのですから。
【参考】マンションナビ(無料査定サービス)の口コミ@良い点・悪い点や使い勝手を検証