マンション売却の経費・費用で値下げ交渉して良いものとダメなもの
どうしたら少しでも高く売ることができるのか、ということがマンション売却の最大の関心事と言えるでしょう。
高く売れるということは、資金化をベストな状態で行ったことを意味すると、最初のころは思っていることが多いようです。
また、高値が付くということは物件に対する評価が(周辺類似物件より)高かったとして、プライドをくすぐられることも関係しているでしょう。
しかし、売却活動を始めようと不動産取引について調べ始めると、「高く売る」ということが必ずしもベストな選択とはいえないことがわかるようになります。
要するに、資産を資金化するということで肝心なのは、売却金額から経費を引いた利益、すなわち手残りがいくらかなのかです。
だから無理に高く売却するよりも、経費を抑えたほうが、労少なくして益多くなることに気がつくというわけです。
そこで、売却経費ではどんな削減が可能なのか、いい点やダメな点を含めてチェックしてみましょう。
マンション売却の経費は値切れるのか値切れないのか
売却経費には、値切れるものと値切れないものの両方が存在します。
1つ1つ見ていきましょう。
売却代金から経費などを引いた譲渡所得に課税される「不動産譲渡所得税」は、税金なので値切ることはできません。しかし、「経費などを引く」という点に注目してください。
つまり、取得金額や売却経費の額によっては、課税金額が減って、支払う税金が少なくなる可能性があります。
売買契約書に貼付する印紙代は、印紙法によってその金額が定められています。法律なので値切ることはできません。
しかし、売買契約書に記載される金額次第ということを考えると、売却金額を下げれば印紙代も節約できる可能性があります。
売却マンションに住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、その抹消手続きが必要です。この費用は、権利の種類などによって変わりますが、いずれも金融機関の規定に従わなければならないので、値切れないと考えたほうがいいでしょう。
仲介を担当した不動産業者の報酬として、仲介手数料が発生します。この手数料は、売買価格に準じて算出した金額を上限とすると法で定められています。
法律なので値切れないという先入観があるかもしれませんが、定められているのが「上限」であることから、それ以下(あるいはゼロ)であっても合法となります。
つまり、仲介手数料は値切ることができる売却経費ということができます。
このほか、売却活動によってはリフォームやクリーニング、設備の修理といった費用が掛かる場合がありますが、これらはケースバイケースなので、今回は触れないことにします。
【参考】マンション売却前にリフォームすると損する?得する?
経費を値切れればマンション売却の利益は増えるのか?
印紙代と不動産譲渡所得税については、法で定められているので表面的には値切れないものの、売却代金を下げれば値切るのと同じ結果になることもあります。
しかし、冷静になって考えてみましょう。経費である印紙代と不動産譲渡所得税を下げるために売却代金を下げるということは、資産価値を必要以上に毀損することになってしまいかねません。
例えば印紙税は、5千万1円の売却代金なら6万円の印紙が必要になりますが、5千万円なら2万円の印紙でオッケーです。ということは、売主である自分が売却代金を1円値切れば、4万円の経費を節約できる計算になります。
ですが、実際は5千万1円で買主が決まり、経費を減らしたいからと「1円オマケします」なんて交渉し直すシチュエーションが起こりえるとは考えにくいでしょう。
実際には、経費のための値切り交渉ではなく、売却代金の値引き交渉が行われるというのが一般的です。
5千2百万円の売出価格に対して、買主が5千万円ぽっきりにしてほしいと交渉し、それが成立してめでたく売買契約へ進むことになれば、マイナス2百万円に対して節約できた経費が4万円になるわけです。
もちろん、「2百万円の値引きに応じずに6万円の印紙を売買契約書に貼る」という選択もあるわけですが、交渉が破談する可能性も含めて、どちらが得かを考える必要があります。
不確定でリスクの大きい税金の経費削減策に比べて、不動産業者に支払う仲介手数料は、相手が民間であること、法の定めが上限であることなど、交渉の余地があるように見えます。
実際に仲介手数料の値引きや実費精算、はたまたゼロ円をうたっている仲介業者もいます。
業界に仲介手数料に対する見直し機運が高まっているとも言えるので、売却経費のなかで値切るのであれば、仲介手数料に絞って考えるという選択が、無理やロスのない戦略でしょう。
まとめ
マンションの売却経費では、値切れるものと値切れないもの、そして値切っても意味がないものがあります。
そのなかで、最も無理やロスがないのは、不動産業者に支払う仲介手数料です。
近年まで仲介手数料は法に定められた上限を請求することが慣例となっていましたが、仲介手数料の値引きや実費精算、はたまたゼロ円にする業者も出現するなど、交渉の余地がある経費となっています。
ただし、売買契約が決まるという段階になって値切るのはお勧めできません。
というのも、不動産を含めた商取引は、関係者の信頼関係が前提にあります。媒介契約で決まっていることを、後になって一方だけに都合のいいように変更したいと言い出すのは、この信頼関係を壊す行為に等しいからです。
信頼関係が壊れてしまうと、それまで決まっていたことも覆されるかもしれません。極端な話、サポートしてくれた仲介業者の離反によって、決まるはずの売買契約が破談になってしまうこともありえるのです。
こうしたリスクを減らすには、媒介契約の時点で仲介手数料の交渉をする必要があります。
やみくもに仲介手数料を値切るのではなく、その業者はどんなサポートができるのか、どれを選べば効果的で、どれを削ることで効果への影響が少ないまま経費が抑えられるのか。
不動産業者との話し合いは、適切な業者選びや売却の成功率アップにもつながりますので、経費節減との一挙両得を狙ってしっかりと取り組んでみてください。