塩漬け投資用マンションを売却する方法はあるの?
2000年に日銀が行った統計調査によれば、日本の個人金融資産の合計1,409兆円のうち53.9%、すなわち半分以上が現預金のままでした。
経済の血液と言われる金融が機能していないことに憂慮した政府は、「貯蓄から投資へ」というスローガンの掲げ、さまざまな施策でこの事態を打開しようとします。
現在のゼロ金利政策のもとでは、現金を銀行口座に預けていてもほとんど利殖にはなりません。追い打ちをかけるように公的年金制度による受給年齢が引き上げられるなど、否が応でも投資を意識しなければ老後を迎えることはできないというのが、一般家庭の台所事情なのです。
そうしたなかで、注目を集めているのが、マンションなど不動産への投資。
株式などほかの金融商品を目的とした融資を受けることができないのに対して、不動産投資では受けられることも、大きなアドバンテージになっていると言えるでしょう。
ところが、家計の助けとするべく購入したマンションであるにもかかわらず、逆に足を引っ張ることになるケースも後を絶たないのは否めません。
「塩漬け」と呼ばれる不良債権化した投資マンションは、ただの紙っぺらのような存在になるならまだしも、株式などの債権と違って所有しているだけで維持費がかかります。
そこで、なんとかこの「塩漬け投資マンション」を売却できる方法はないのか、考えてみましょう。
【参考】2022年問題をわかりやすく解説@マンション売却に影響?
投資マンションを「塩漬け」とする定義
投資マンションとは、自分が住まずに第三者に貸して、その賃料を得るために所有することを目的とするものです。
まず、購入方法から、「現金購入」と「金融機関からの融資を受けて購入」の2種類に分けることができます。
次に、運用方法から、「賃貸できている」と「賃貸できていない」の2種類に分けることができます。
投資マンションは主に、この4つの要素の掛け合わせによって効果を計ることができるのです。
最も投資の成功率が高いのは、「現金購入」で「賃貸できている」というパターンです。現金で購入することによって、手元の資金は減ってしまいますが、賃貸収入がそれを補填してくれます。
損益分岐としては、「投資マンションの購入金額」が何年で「経費を引いた賃貸収入」に追い抜かれるかを見ることになります。
例えば1,000万円の中古の投資マンションを現金で購入、毎月の家賃が7万円として、諸経費や税金が3割ほどかかるとすると手元に49,000円残り、最短で204ヵ月=17年後には投資金額を上回るリターンを得ることができるようになります。
もちろん、17年のあいだに賃料が下がったり、退去や大がかりな修繕によって収入が途切れたり支出が増えることも考えられますが、投資金額の回収期間は延びたとしてもマイナスからプラスに向かう方向性は変わらないと言えるでしょう。
したがって、このパターンは「塩漬け」とは呼びません。
次に、「現金購入」で「賃貸できていない」というパターンを見てみましょう。
無借金で空き部屋を抱えている状態ですから、収支はゼロと考えがちですが、実は違うのです。
不動産投資がほかの金融商品と大きく違うのは、維持するためのお金がけっこうかかるという点です。具体的には、マンションの管理組合へ収めなければならない管理費や修繕積立金が毎月、そして固定資産税と住民税が毎年、それぞれ発生することになります。
都心の1,000万円程度で購入したワンルームのマンションであれば、管理費と修繕積立金で毎月1~1.5万円、税金で毎年4~5万円。つまり、空き部屋に年間20万円超の支出を覚悟しなければならないことになるのです。
では、「金融機関からの融資を受けて購入」して「賃貸できている」というパターンはどうでしょうか。
金融機関からの融資については、自宅マンションが住宅ローンを使うことができるのに対して、賃貸運営を目的とした購入にはアパートローンと呼ばれる一般の事業融資の適用になります。
住宅ローンとの大きな違いは、なんといっても金利です。住宅ローンのフラット35が1%台の金利であるのに対して、アパートローンは下がったとは言え3~4%が一般的。属性や物件の評価によっては5%以上になることもあります。
金利が高いということは、毎月の返済金額に影響することを意味します。
「賃貸できている」ことによって得られる収入は、主にこの返済にあてられることになります。そして、この場合の損益分岐は、経費・税金を差し引いた後の利益を返済金額が上回るか下回るかで、大きく異なってきます。
端的に言えば、上回れば定期預金の金利と比較ができる投資商品になり、下回れば借金をした上に持ち出しをしなければならない「不良息子を抱えること」に他ならなくなるのです。
そして、「金融機関からの融資を受けて購入」しているのに「賃貸できていない」のであれば、分析するまでもなく「お金をどぶに捨てている状態」になります。
塩漬け投資マンションを売却できる可能性
以上のことから、投資マンションが「塩漬け」になるのは、「金融機関からの融資」の返済額と賃料のバランスがマイナスになる可能性が高い場合です。
この状態の投資マンションを売却するには、周辺相場と同じ条件とはいかないことをまず認識しなければなりません。
そのうえで、任意売却に準じた売却計画を立てられるかが、成否を決めることになるでしょう。
放置すれば、いずれは任意売却せざるをえない、あるいは最悪「競売」の可能性も想定しなければならないのが、塩漬け投資マンションなのです。
処分できる可能性を少しでも早く講じることで、追い詰められる前に「塩漬け」という負債から解放される可能性を高めることができるのです。
まとめ
投資を考えなければならない現代の社会において、マンションなどの不動産投資は比較的ローリスクと考えられています。
しかし、状況によってはほとんど利息が付かない普通預金よりも悪い状況を招きかねない、金融リテラシーを求められる投資であることも理解しておくべきです。
お金をどぶに捨てている状態のような「塩漬け投資マンション」を売却できる可能性は、放置していればしているほど低くなってしまいます。
もちろん、投資した元金を取り戻すことはかなり難しいですが、金食い虫の空き部屋を抱えている最悪の状態から解放されることを優先するべきでしょう。
その際には、債務を解消できる売却金額であることを前提に、任意売却を参考にした対策を講じることが有効になるでしょう。
なお、任意売却については次のサイトでわかりやすく解説されていますので、そちらの内容が参考になります。
【参考】任意売却のメリット・デメリット
いずれにしても、売却後の生活設計にも関わる重大な決断になるので、不動産取引だけでなく税務にも通じた専門家に相談することをお勧めします。